英国インテリアとわびさび

インテリアデザイン

「わびさび」は、不完全さの美しさ

忙しさと効率が求められる現代社会の中で、私たちはつい「完璧」であることを目指してしまいます。しかし、日本には、あえて不完全さや移ろいの中に美を見出す考え方があります。それが「わびさび(侘寂)」です。


わびさびとは

「わび(侘)」は、質素で静かな佇まい、飾らない素朴さを指します。
「さび(寂)」は、時を重ねることで生まれる味わい、古びたものの美しさを意味します。

「新品の輝き」ではなく、「使い込まれた器の傷」や「色あせた木の風合い」にこそ、深い魅力を感じる——それがわびさびの心です。

わびさびの精神は、禅の思想と深く結びついています。特に茶の湯を大成した 千利休 は、豪華さよりも簡素さを重んじ、静けさの中にある豊かさを表現しました。華美な装飾ではなく、素朴な茶碗や自然素材の空間を通して、「足るを知る」美意識を広めたのです。最近人気の、ひびの入った陶器を金で継ぐ「金継ぎ」も侘び寂びの精神から生まれた美です。

わびさびは特別な芸術作品だけのものではありません。日常の暮らしの中にも見つけることができます。

もっと詳しく → 侘び寂び

「ボロ」という美しさ

以前、英国のインテリアブランド Scion が「Wabi-Sabi(侘び寂び)」をテーマにコレクションを発表した際、私はスタイリストの友人イレーンと共に撮影用サンプルのデザインを担当しました。

ちょうどその前の年、東北で大きな地震が起こりました。そして多くの方々が苦難を乗り越える姿がSNSやニュースで世界中に届きました。

かつて貧しかった東北地方では、古い布切れを集めて継ぎ合わせ、何度も繕いながら使い続ける「ボロ」の文化がありました。擦り切れるまで使い、さらに直し、また使う——その営みは、決して装飾のためではなく、生きるための知恵でした。私は東北で被災した人たちの事を思いながらこのキルトを縫い上げました。

わびさびとは、単なるデザインのトレンドではなく、物語りを受け継ぐ、時間と記憶を受け継ぐ美意識だと感じます。その物語りを受け取る「エモーション(エモい)」感情が私たちの美意識に着火するからです。

そのとき制作した「ボロキルト」の写真は、やがてフランス・パリの街頭ビルボードを飾ることになります。

もっと詳しく → ボロ

英国のカントリースタイルは「わびさび」

日本の「わびさび(侘寂)」と、英国のカントリースタイル は、一見まったく異なる世界観のように見えます。しかし、共通する美意識がいくつもあります。

1 自然とのつながりを大切にするイギリス のカントリーライフ、わびさびもまた、四季の移ろいを感じる日本的な自然観から生まれました。

2 古さ・経年変化への愛着新品よりも「時間を重ねたもの」使い込まれたアンティークに価値を見出す点も共通しています。

3 ガーデニングや手作りを楽しむスローライフは、効率や大量消費から距離を置き、ゆったりとした暮らしを理想とするわびさびの哲学、素朴な暮らしへのノスタルジーを含んでいます

4. ビビッドな色より控えめな色彩、落ち着いたトーンを好みます。自然界にある優しい色味が基調です。

「わびさび」をインテリアに取り入れる方法

素材を生かす

わびさびのインテリアでは、自然素材を積極的に取り入れます。

  • 無垢材のテーブル
  • ざらりとした土壁
  • リネンや綿のファブリック
  • 石や陶器の器

部屋を少し整え、自然素材を取り入れることで、古いものを大切に使い続ける心を育みます。完璧ではないからこそ、心に余裕が生まれます。均一さよりも、個性を楽しむことが大切です。

余白を作る

物を減らし、空間に“間”をつくることも重要です。飾りすぎない、壁を埋め尽くさない、棚に余白を残す、など、引き算をすることで、その空間にあるものの個性が引き立ちます。

静かな部屋は、心のノイズを減らしてくれます。
余白のある空間は、呼吸を深くしてくれます。
完璧を目指すのではなく、「今あるもの」を慈しむ暮らしこそ、わびさびの本質です。

古いものを大切にする

新品で揃える必要はありません。傷や経年変化を「劣化」と捉えず、「育っている」と考える視点が大切です。
例えば、割れた器を金で継ぐ金継ぎのように、欠点を美へと昇華させることができます。

  • 使い込んだ木の椅子
  • 少し欠けた茶碗
  • 色あせた布

時間を重ねたものには、静かな存在感があります。


控えめな色合い

わびさびインテリアに似合う色は、自然界にある落ち着いたトーンです。空間に穏やかさと静けさをもたらします。

  • 生成り
  • 墨色
  • 茶色
  • 灰色
  • 深い緑