英国のパッチワークとリバティプリント 

DIYインテリア

イギリス・パッチワークキルト

パッチワークといえば「アメリカ」のイメージが強いかもしれませんが、実はそのルーツの多くはイギリスにあります。

湖水地方レベンスにあるエリザベス朝様式の歴史的建築邸宅レベンス・ホール(Levens Hall)は、「イギリス最古のパッチワーク」が保管されている場所として世界中の愛好家に知られています。 


英国最古のパッチワーク・キルト 

制作者は当時の領主ジェームズ・グレアム大佐の妻、ドロシー・グレアムとその娘たちによって作られたと伝えられています。 使用されているのは、当時非常に高価だったインド直輸入の手刷りコットンです。赤と緑を基調としたエキゾチックな鳥や花の紋様が、当時のまま鮮やかに残っています。 

パッチワークキルトの歴史

パッチワークがイギリスで装飾工芸として広まったのは17世紀後半のこと。インドから輸入された珍しい豪華な更紗やシルク、高価なベルベットの端切れを繋ぎ合わせたのが始まりで、裕福な女性たちのステータスシンボルでした。

19世紀、産業革命によって綿織物が大量生産されるようになると、パッチワークは一気に庶民の間へと広がります。

イングリッシュ・ペーパー・ピーシング (EPP): 六角形(ヘキサゴン)などの紙の型紙を布で包んで縫い合わせる、イギリス伝統の技法が確立されました。

ヴィクトリア朝の華やかさ: ヴィクトリア時代には、シルクやベルベットを使った装飾性の高い「クレイジー・パッチワーク」が流行。家庭を彩る芸術品として親しまれました。

パッチワークの歴史の詳細はビクトリア&アルバート博物館の詳細 → V&A博物館パッチワークの歴史(英語)

パッチワーク慈善活動とエリザベス・フライの功績

イギリスの監獄改革家エリザベス・フライは、女性囚人に更生のための技術としてパッチワークキルトを教えるなど、社会教育の一環としても活用されました。この精神は今もイギリス各地に支部のある「英国キルト協会」によって受け継がれています。→ 英国キルト協会(The Quilters’ Guild) 

<エリザベス・フライとパッチワーク:針と糸がもたらした更生への道>

19世紀初頭、ロンドンのニューゲート刑務所を訪れたエリザベス・フライは、劣悪な環境で無気力に過ごす女性囚人たちの姿に衝撃を受けました。彼女は、罰を与えることよりも「教育と仕事による更生」が必要だと考え、その手段の一つとしてパッチワークを取り入れました。 

彼女がパッチワークを選んだのには、3つの戦略的な理由がありました。

  • 精神の安定(マインドフルネス): 単調で集中力を必要とする縫い物作業は、荒んだ囚人たちの心を落ち着かせ、規律をもたらす効果がありました。
  • 実用的なスキルの習得: 当時、裁縫は女性にとって重要な職業スキルでした。パッチワークを通じて高い技術を身につけることで、出所後の自立(雇用)を支援しました。
  • 自尊心と報酬: 囚人たちが作った作品を販売し、その収益の一部を本人たちに還元することで、自分の力で対価を得る喜びと自尊心を与えました。 

彼女の活動で最も有名なエピソードは、オーストラリアなどの流刑地へ送られる女性囚人たちへの支援です。 

  • 「役立つものバッグ」の配布: 船での長い航海(約4ヶ月)の間、囚人たちが退屈せず技術を磨けるよう、フライが設立した協会は、布の端切れ、針、糸などを詰めた「バッグ」を一人ひとりに手渡しました。
  • 奇跡の作品: 1841年、流刑船ラジャ号に乗った女性たちが航海中に共同で作り上げたのが、現在オーストラリア国立ギャラリーに所蔵されている「ラジャ・キルト」です。約3,000個近いパーツからなるこの美しいキルトは、絶望的な状況下でも人間は美を創造できるという象徴となっています。

エリザベスフライの指導した作品の数々は英国湖水地方の街ケンダルのクエーカー博物館に展示されています。

クエーカー博物館 (2025年12月閉館)

パッチワークの種類

パッチワークのデザインの種類は様々、国によっても色合いが異なります。選んだ色や素材によっても表情が変わるのがパッチワークの醍醐味。昔ながらのクローシェで編んだスクエアを繋いだパッチワーク、最近では古着をつなぐ東北地方の「ボロ」パッチワークの美しさも再評価されました。

  • 四角つなぎ(Nine-Patch / 9パッチ)
    3×3の小さな四角を組み合わせて1つの大きなブロックにするデザイン。
  • チェッカーボード
    交互に色や柄を並べるシンプルな四角つなぎ。
  • ハーフスクエアトライアングル(HST)
    正方形を斜めに切って三角形2枚にし、組み合わせるデザイン。
  • ダブルハーフスクエアトライアングル(DHST)
    HSTをさらに組み合わせて複雑な模様を作る。
  • ログキャビン(Log Cabin)

今日では、パッチワークは単なる家庭の手仕事を超え、テキスタイル・アート(布の芸術)として世界中のファンに愛されています。

リバティプリントとパッチワーク

リバティプリントは、「タナローン」と呼ばれるシルクのような薄いコットン生地にプリントされた花柄が有名です。ソフトでツルッとした手触りが心地よく、薄いのに切っても生地端がほつれてこないので、パッチワークをする私たちにとっては神のような存在。

タナローンを使ったパッチワークキルトは可愛い花柄や鮮やかな色合いが、英国に限らず世界中で人気です。

Liberty Tana Lawn

Libertyの布づくり 工場見学

(Libertyサイトより引用)

Liberty(リバティ)は、1世紀以上前から自社デザインの布地を印刷してきた、布づくりの先駆者です。今日では、ヨーロッパのテキスタイル産業の中心地、コモ湖のほとりに自社工場を構え、伝統技術と最新技術を組み合わせながら布地を生み出しています。

リネンやシャンブレー、そしてリバティの代名詞でもある「タナローン」コットンに、アーカイブデザインやスタジオで生まれた新しいデザインが美しく印刷されます。毎年数百万メートルもの布地が、印刷、蒸気処理、洗浄、ソフトニングの工程を経て、熟練技術者の厳しい品質チェックを受け、世界中へ届けられています。

リバティの工場では、昔ながらのスクリーン印刷技術を大切に守りながら、最先端のデジタル印刷技術も導入。最近では、色ごとに印刷できる世界でも数台しかない最新機械を導入し、デザイナーの写真のような精密なデザインや絵画のような創作物も、鮮やかに布に表現できるようになりました。

Libertyの布づくりには、2つの精神が息づいています。ひとつは、誇り高いヘリテージデザインの伝統。もうひとつは、常に新しい表現や技術を追求する革新の姿勢です。この両方があるからこそ、Libertyの布は世界中の人々に愛され続けています。